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【Album Review】2015年を代表するエモ純度100%のマスターピース


Hop Along / Painted Shut


9.1 / 10 [Saddle Creek ; 2015/5]



ここ最近はとにかく「エモ」がアツい―――とは言っても、それはThe Get Up KidsやJimmy Eat Worldのようなスタイルとしてのエモではなく、「エモーショナルな音楽」というもっと本質的なものとしてのエモだ。例えば昨年リリースされたSiaのニュー・アルバム『1000 Forms Of Fear』はその象徴ともいえる一枚で、これまでの苦悩を赤裸々に綴った歌詞と彼女の張り裂けんばかりの歌声に涙した人はきっと少なくないと思う。その他にも感情剥き出しのガレージ・サウンドを鳴らしたCymbals Eat Guitarsの『Loses』や、昨年のベスト・アルバム・レースを総なめにしたThe War On Drugsの『Lost In The Dream』、さらには場末のバーでオヤジが80’sポップを熱唱しているかのようなFuture Islandsの『Singles』など、ここ数年で生まれたエモい名盤は枚挙に暇がない。そういった人間味溢れる演奏や歌への回帰は、昨今のEDMへのカウンターなのかは定かではないが、今年に入ってからもその勢いはとどまるところを知らず、今に至っている。

この米フィラデルフィアを拠点に活動する4ピースバンドHop Alongの新作は、そんなエモ・ムーブメントの一つの到達点と言っていいかもしれない。中でもバンドの中心人物である紅一点ボーカリストFrances Quinlanのハスキーな歌声は、昨年のSiaにも比肩するほどのパワーに満ちており、聴き手の胸をギュッと締め付ける。また、サウンドプロダクションの良さも気になる今作だが、プロデュースとミックスを手掛けたのはなんとDinosaur Jr.やSonic Youthの作品でも知られる名匠、John Agnello。各楽器がきっちり棲み分けされたクリアなサウンドは、Francesの歌と楽曲そのものの良さをより一層引き立てている。そういえば、パワフルな歌声と上質なサウンドプロダクション、といえば今年はAlabama Shakesの新作『Sound & Color』の一人勝ち感も否めないが、今作はそれにも全く引けを取っていない。まさにサウンドやソングライティングに拘りながら誠実な歌心をストレートに爆発させた大傑作だ。

余談だが、あのWaxahatcheeことKatie Crutchfieldの左腕には、元々はFrancesのソロ・プロジェクトだったHop Alongの処女作『Freshman Year』のアートワークのタトゥーが入っている(参考画像)。本人曰く、大学時代にこのアルバムを初めて聴き、Francesの歌に大きな衝撃を受けたそうで、そんな彼女へのリスペクトの意を込めて彫ったのだろう。無論、その衝撃は、今のWaxahatcheeの礎になっている。エモーショナルな音楽はこの世から絶対になくならない。そしてこれからも、だ。


【Album Review】ポップミュージックのその先にあるもの


Holly Herndon / Platform


8.8 / 10 [4AD ; 2015/5]



雨がポツポツ降る音、ハサミで物をチョキチョキ切る音、本をペラペラめくる音、パソコンのキーボードをカタカタたたく音――あなたはそんな音に快感を覚えたことはないだろうか?そういった「音によって脳が気持ちよくなる現象」は一般的にASMR(Autonomous Sensory Meridian Response)と呼ばれ、そのASMRを引き起こすASMR動画なるものがここ数年、大手動画配信サイトを中心に密かな人気を集めているという。言葉で説明してもいまいちピンと来ないと思うので、実際にYouTubeで「ASMR」と検索して視聴してみるといいだろう。そこにはものすごくフェティッシュな世界が広がっている。

話は翻って、米サンフランシスコを拠点に活動する女性プロデューサー、Holly Herndonのニュー・アルバムは、そういったASMR動画に相通ずる一枚になっている。先行シングルM2やM9を筆頭に、まるでOneohtrix Point NeverとGrimesを一本の線で繋いだかのような心地よいサウンドテクスチャーが展開される今作だが、その中でも特に印象的なのが7曲目の“Lonely At The Top”。ここにはメロディやリズムの類は皆無で、女性の妖艶な囁き声、紙が擦れる音、水が滴る音...その一音一音が身体に染みこみ、脳内からドーパミンがガンガン放出されていくような感覚は、まさに前述したASMR動画のそれであり、私がこれまで一度も経験したことがなかった刺激的なもの。紛れもなく今作を象徴するトラックであり、ハイライトの一つだ。

何もかもが簡略化された近い未来、もしかするとこういったASMRを極限まで追求した音楽がポップミュージックのスタンダードになっているかもしれない。それはとても興味深い話であり、少し恐ろしい話でもある。Holly Herndonはポップミュージックのその先を見つめている。


【Album Review】孤高の奇才が放つ「終わりのないレコード」


Clarence Clarity / No Now


9.3 10 [Bella Union ; 2015/3]


2013年のデビュー以来、正体不明のユニットとして一部の音楽ファンの間で話題を呼んでいたClarence Clarity。私の決死のリサーチによって、このユニットの正体が2008年に惜しくも解散してしまった3ピースバンド=Elle MilanoのフロントマンAdam M. Crispによるソロプロジェクトだと判明したわけだが、そんな彼がついに待望のデビューフルアルバムを投下した。

音の方はロックやエレクトロ、ヒップホップ、サイケデリック、ファンク、R&B、さらにはワールドミュージックやエクスペリメンタルまでも貪欲に吸収したハイブリッドなストレンジ・サウンド。もし私がレコードショップの店員だとしたら、この作品をどのジャンルの棚に置くか何時間も考え込んでしまうだろう。しかしそれでいて、きちんと「ポップ・レコード」として成立しているのが今作のキモ。デビューEP『Save †hyself』にも収録されていたM3やM16を筆頭に、彼のソングライターとしての才能が爆発したカオティックでスリリングなポップ・チューンの連続には何度も鳥肌が立った。初めは全20曲、トータル1時間超えの大作と聞いて身構えてしまったが、結果的にはジャスト、むしろ個人的にはまだまだ聴き足りないと感じたのが正直なところである。

ちなみに、ラストナンバーのブチっと途切れるような終わり方に妙な違和感を覚えたが、これは実はオープニングナンバーの冒頭へと繋がっている。どうやら私たちは終わりのない迷宮に閉じ込められてしまったようだ。はて、どうしたものか...おっと、ついさっきまで「まだまだ聴き足りない」なんて言っていたのは、どこのどいつだ?


【Album Review】生まれるべくして生まれたコラボレーション作品

JUGEMテーマ:ROCK

Dirty Projectors & Björk / Mount Wittenberg Orca


7.8 / 10 [Domino ; 2011/11]


本作は「とある海岸での出来事」を刹那的に描いたコンセプト・アルバムである。ここに登場するのはアイスランドの歌姫ビョーク扮する母クジラと、ブルックリンのロックバンド、ダーティー・プロジェクターズのメンバーであるアンバー、エンジェル、ヘイリー扮する三匹の子クジラ、そして同バンドのフロントマンであるデイヴ・ロングストレス扮する可憐な女性アンバーだ。デイヴがアンバーを演じるというこの非常にややこしい設定は、デイヴのひねくれたセンスがよく表れていてとても面白いわけだが、本作ではそんなクジラの親子たちとアンバーの出会いと別れ、そしてそれぞれが抱く複雑な思いが、独特のテンポと温度で描き出されている。

そんな強固な物語性をはらんだ本作だが、音の方は至ってシンプルだ。あえて音数を最小限に留め、作品の全てを優雅なハーモニーと聴き手のイマジネーションに託すことで逆説的に広がっていく無限の音世界は、まさに時代を常にリードしてきた彼らならではの業。そういった意味でも、本作は「歌」に大きく舵を切ったDPの最新作『スウィング・ロー・マゼラン』への布石にも受け取れるし、その一方で先鋭的な音作りが施されていたビョークの2011年リリース作『バイオフィリア』と対をなす作品にも受け取れるだろう。個人的に本作は、両者のキャリアの中でもなかなか興味深いポジションにある傑作だと思う。

本作のリリックを読み解いていくと、次第に「人類と自然の共存」という切実なテーマが浮き上がってくる。ラストトラックにおけるデイヴ(人類)とビョーク(自然)の「わたしたちはひとつなのだ」という美しいユニゾンも、強烈なメッセージとしてグサリと胸に突き刺さる。私はこの地球が抱える環境問題についてぼんやりと考えていた。


【Track Review】究極のカバーソング


JUGEMテーマ:ROCK

Lana Del Rey / "Blue Velvet" 


10 / 10 [Polydor ; 2012/9]


ファスト・ファッション大手のH&Mが今期のキャンペーンソングとして起用し大きな話題を呼んでいる本楽曲だが、これが典型的なクラシックカバーの枠を超えた、非常に完成度の高いカバーソングになっていて驚いた。

まるでビロード生地のようなラナの艶やかな歌声と普遍的なメロディの妙は、一瞬これがカバーソングであることを忘れてしまうほどしっくりはまっている。もちろんカルト映画の帝王デイヴィッド・リンチ監督の代表作『ブルー・ベルベット』の主題歌でもあった往年の名曲を、以前からリンチ映画のファンを公言していたラナ本人がカバーするという出来事はもはや必然とも言えるのだが、なによりもこのカバーソングは彼女のどのオリジナル楽曲よりも彼女の魅力が最大限に引き出されたものになっていて素晴らしい。

そして、私は今までこのアーティストに関して誤った指摘をしていたということを、ここで改めて謝罪させてほしい。誤った指摘、それは以前に彼女のデビューアルバムのレビューで書いた、「ジェリー・ブラッカイマー風の厚化粧をする必要などどこにもない」という部分だ。それは言い換えれば、彼女が派手なハリウッド映画のヒロインのようなシンガーではなく、デイヴィッド・リンチ映画の住人のようなシンガー――それはすなわちほんのりと狂気を含んだシンガーであって欲しかったという個人的願望でもあるのだが、そもそもこのアーティストは映画内の架空の登場人物ではなく、それを演じる役者の方であったということを、このカバーソングを聴いてまざまざと思い知らされた。それをもっと分かり易く説明するならば、彼女は米国の映画女優=ローラ・ダーンそのものなのだ。

ローラ・ダーンといえば、先述の『ブルー・ベルベット』では普遍的な少女役を、現時点でのリンチ監督の最新作『インランド・エンパイア』では狂気的な主人公を演じていたことで有名だが、その一方で過去には『ジュラシック・パーク』(グラント博士と共に行動する古植物学者役)や『マスク』といった誰もが一度は観たことのあるようなメジャー映画に多数出演していることでも知られている。つまりメジャーやインディーを問わず、まるでカメレオンのように自分の色を自在に変えながらその役を演じきってみせる女優ローラ・ダーンと、壮大なファンタジー映画のようなトラック(“Born To Die”)やスモーキーな空気感漂うギャング映画のようなトラック(“Million Dollar Man”)、はたまたこの「ブルー・ベルベット」という愛憎渦巻く古典映画のようなトラックで、声色を自在に変えながらその世界の主人公になりきってみせる歌手ラナ・デル・レイの両者は、立場こそ女優と歌手と異なりながらも、その性質は全く同じ。(ちなみに両者の本名が共にエリザベスなのは流石に出来過ぎた偶然だろう)そう考えると、彼女が以前からリンチ映画のファンを公言しながらも、デビューアルバムの冒頭ではまるでハリウッド大作映画のような壮大なサウンドスケープをバックに悠々と歌っていたという、私が彼女のデビュー作を聴いて最も違和感を覚えた部分にも納得がいく。要するにこのアーティストは、一つの顔や舞台に収まらない女優ライクなシンガーだったのだ。

まるで映画女優のようなシンガー、ラナ・デル・レイ。そしてそんな彼女の本質にいち早く気付き、広告塔として抜擢したH&M。私はこの両者に心から拍手と賛辞を贈りたい。そして何度でも言おう。これは音楽史に残るであろう究極のカバーソングであると。



【Track Review】このアートワークに突っ込んだら負けだと思います

JUGEMテーマ:ROCK

Blood Diamonds / "Phone Sex (feat. Grimes)"


10 10 [4AD ; 2012/7]


カナダの音楽プロデューサー=ブラッド・ダイヤモンズによる、同郷の歌姫グライムスをフィーチャーした清涼感溢れるダンストラック。

まず、そのジャケットの異物感は置いておくとして、私がこのトラックを一聴して感じたことは、「これはインディーからのKポップへの回答だ」である。このベタでキャッチーなメロディとキュートな女性ボーカル、そして何の迷いもない四つ打ちビートの融合は、どこからどう見てもKポップのそれ。もちろん「彼らがKポップの影響を受けた」ということはあくまでも私の予想なのだが、ここにそんな予想を確信に変える決定的なものがある。それは先ほど開催されたピッチフォーク・フェスティバルにおける彼らのライブ映像だ。どうだろう?レディー・ガガを意識したであろうセクシーな女性ダンサー、ぴょんぴょん跳ねながら無邪気に歌い上げるグライムス嬢、そして黒装束に身を包んだブラッド・ダイヤモンズが一体となって作り上げる、文字通り「セツワマ(セックス)」のような至福のパーティー空間。これは間違いなくインディペンデントのそれではなく、ポップカルチャーそのものである。つまりこのトラックは、ポップを真っ向から肯定して作り上げられた、この夏ヘビロテ間違いなしのサマーアンセムなのだ。

もちろん「ポップなサマーアンセム」なんて世の中に腐るほどあるのだけれど、それをカナダのビートメイカーが元ウィッチハウス系のボーカリストをフィーチャーして作ったという事実が、何よりも面白い。



【Album Review】キャプテンデイヴ、いざ大海原へ

JUGEMテーマ:ROCK

Dirty Projectors / Swing Lo Magellan


8.6 / 10 [Domino ; 2012/7]


ねじれチェンバーポップの究極形ともいうべき前作"ビッテ・オルカ"が数多くのメディアやリスナーから大絶賛され、一躍その名を世界中に轟かせたニューヨークはブルックリン出身の6人組ダーティー・プロジェクターズ。そんな彼らの通算6枚目となるフルアルバムがこの"スウィング・ロー・マゼラン"である。

正直な話、私個人の本作に対する期待度は決して高いものではなかった。なぜなら極限までそぎ落とされたバンドアンサンブルにヒステリック気味な男性ボーカルと優雅な女性コーラスが重なっていく先行シングル"ガン・ハズ・ノー・トリガー"は、その音の面妖さと美しさのギャップに思わずウットリと聴き惚れてしまうほどの好トラックだった半面、ここでは前作までの気が狂ったようなエレクトリックギターやビートは完全に鳴りを潜め、おまけにバンドの一翼を担っていた女性シンガー=エンジェル嬢のコーラスも姿を消していて、果たしてこのままで本当に09年にリリースされたバンド屈指の傑作"ビッテ・オルカ"に匹敵するものが作れるのだろうか?と密かに新作の行方を危惧していたからだ。しかしついに本作がリリースされ、いざその再生ボタンを押してみると、そんな私の懸念は一瞬にして吹き飛ばされた。これが想像以上に凄まじい作品になっている。

まず、本作を強引にワンセンテンスで要約するならば、ずばり「一点の曇りもないウタのアルバム」である。もちろんバンドの首謀者デイヴ・ロングストレスのネジが何本も外れたようなギターリフ、アンバーとヘイリーの多幸的かつ重層的なコーラスワーク、そしてナットとブライアンの堅実なリズムセクションが緻密に絡み合った掴み所のないチェンバーポップサウンドは前作とほぼ同じなのだが、彼らが本作の楽曲群においていつも以上にウタに力を入れ、ポップソングとしての強度を爆発的に高めているのは何よりも感動的だ。つまり同郷の盟友アニマル・コレクティヴの現時点での最新作"メリーウェザー・ポスト・パビリオン"以降のUSインディー・シーン全体がそうだったように、彼らもまた本作でウタへと大きく舵を切っているのである。

そういった意味でも本作の主役はあくまでもデイヴであり、他のメンバーはここでは完全に脇役に徹している。いや、主役・脇役と言うよりも、むしろ「船長とそのクルーたち」と形容した方が正しいのかもしれない。なぜならその迷いなく真っ直ぐ突き進んでいくデイヴの雄姿、そしてそれをしっかりと支えるメンバー達に、ふとアルバムタイトルにもある探検家フェルディナンド・マゼランとそのクルーたちの凛々しい姿が重なるからだ。6枚目にして彼らの新たな船出となる野心的な一枚である。


【Album Review】とある雨降りの日に

JUGEMテーマ:ROCK

Now, Now / Threads


8.4 / 10 [Trans-Records ; 2012/3]



今日はなんとも不思議な天気に遭遇した。晴天にも関わらず、突如大雨が降ってきたのである。所謂「天気雨」だとか「狐の嫁入り」だとか呼ばれるこの現象は、ウィキペディアによると「雨粒が地面に到達するまでに雨雲が消滅した場合に発生する気象現象」なのだそうだ。話は変わって、アメリカはミネアポリスを拠点に活動する男女混合3人組ナウ・ナウの新作"Threads"は、そういった天気雨を彷彿とさせる一枚になっている。つまり空は快晴なのに雨がしとしと降っている、そんな作品なのだ。

前作"Cars"の野暮ったいサウンドは綺麗に磨かれ、不安定だったメロディもより一層強化されている。特にアコースティックが前面に押し出された"Dead Oaks"や抜群の疾走感を持った"Thread"はその顕著な例で、聴く者に瑞々しい印象を与えてくれる。気持ちいい。が、それでもやはりキャシー(Vo/Gt)のボーカルだけは変わらない。繊細で、淡泊で、ちょっと触れただけでたちまち崩壊してしまいそうな彼女の歌声には、シューゲイザー独特の湿っぽいメランコリーが宿っていて、ただただ胸が潰されそうになる。つまり私が本作を説明するにあたって「天気雨」というキーワードを用いたのは、まさにここにはそういったフレッシュネスとメランコリーがまるで天気雨のようなイメージで広がっているからだ。「顔は笑っているけれど、心は泣いている作品」と言い換えてもいいかもしれない。

なんにせよ、改めて自分はこういったじめっとしたシューゲイザー/ポストロック作品が大好きなんだなぁと物思いにふけながら聴き入ってしまったわけだが、ただ一つだけ覚えておいて欲しいことは、「天気雨も決して悪くない」ということだ。なぜなら天気雨の後には必ずそこに「美しい虹」が生まれるから。このあまりにも眩しくて、切なくて、そして美しすぎるレコードを聴いているほんの41分間だけでも、何もかも忘れて、ただ一人きりで恍惚とした表情を浮かべていたい―そう思わせる、珠玉の一枚である。


【Album Review】今と昔をつなぐ架け橋

JUGEMテーマ:ROCK

Fanfarlo / Rooms Filled With Lights


8.0 / 10 [Atlantic Recording ; 2012/2]


ヨンシーの妹君シガロスちゃんをアートワークにフィーチャーしたデビュー作"レザヴォア"がこの上なく素晴らしかった、英国はロンドン出身の5人組ファンファーロ。そんな彼らの2ndアルバムがこの"ルームズ・フィルド・ウィズ・ライツ"である。ちなみに今作のアートワークには「森に掛かる鉄橋」が大々的にフィーチャーされているが、これは本人たち曰く「自然の中にある人間が作った建造物」すなわち「相反する二つの世界の共存」をテーマにしているそうで、「なるほど〜よく考えられたアートワークだな」と感心させられる。(詳細は後述する)

やたら滋味深いナンバーで幕を開ける本作だが、もちろん前作までのすっと身体に沁み入ってくるようなポップネスと、メインソングライターのサイモンとマルチプレイヤーのキャシーがあやなす美しいコーラスワークはここでも健在。また、前述のアートワークが象徴する通り、ストリングスやホーンといった古典的なサウンドとシンセサイザーやサンプラーといった近代的なサウンド、その相反する二つのサウンドが共存する今作のカラフルな音世界は、改めてこのバンドの類い稀なる音楽センスを感じさせるとともに、彼らが凡庸なフォークバンドではなく、エレクトロニクスもストリングスもなんでもかんでも取り入れてセンスの良いポップミュージックをサラリと構築してみせる、まさに今風で手先が器用なバンドであることを再確認させられる。そう言えば誰かがXTCやヘヴン17といった先人達を引き合いに出してこのバンドを語っていたけれど、それも大いに納得である。

つまり本作はどこか懐かしい雰囲気を持ちつつも、ひとえにオーケストラル・ポップという枠に収まらない、今と昔を密接に繋いだ21世紀型のポップミュージック集なのだ。良い。


【Album Review】ティン・ティンズとは、「フック」である

JUGEMテーマ:ROCK

The Ting Tings / Sounds From Nowhereville


7.1 / 10 [SONY BMG ; 2012/2]


ここ日本でもドラマの挿入歌やビールのCMソングに楽曲が起用され、一躍時の人となった英マンチェスター出身の男女デュオ、ティン・ティンズ。2008年にリリースされた彼らのデビュー作『ウィー・スターテッド・ナッシング』は、まさに「全曲シングル化可能」と言っても決して過言ではない超絶ポップな快作だったわけだけど、実に4年ぶりの2ndアルバムとなる今作は少し様子がおかしい。本作を一言で言うなら「ティン・ティンズらしさがまるでない作品」そんな印象である。

前作よりもサウンドプロダクションはグッと向上し、音数も何倍にも増え、それでいて前作までのD.I.Y.感も程よく残っている。徐々に高揚していくオープニングナンバー"サイレンス"や、高々と鳴り響くベルの音が気持ちいい"ヒット・ミー・ダウン・ソニー"の出だしもなかなか悪くない。けれど、曲を聴き進めるにつれて「妙な違和感」がじわりじわりと襲ってくる。まるでニルヴァーナの"スメルズ・ライク・ティーン・スピリット"のイントロ部分だけを切り取って少し加工して再び張り付けたような先行シングル"ハング・イット・アップ"、アゲとサゲを交互に繰り返しながら突き進んでいく"ギブ・イット・バック"、どことなく前作のラストトラックを彷彿とさせる淡々とした曲調が印象的な"ワン・バイ・ワン"、ダウナーな雰囲気が「らしくない」"イン・ユア・ライフ"と、ずばり今作には彼らの十八番でもある「鼻歌で歌っていたら偶然生まれました」みたいなナチュラルでキャッチーなキラー・フックが皆無なのだ。これこそおそらく前述の「妙な違和感」の正体だろう。その他にも"デイ・トゥ・デイ"の小洒落たストリングスは流石に「背伸びしすぎだろ!」と突っ込みたくなったし、"ヘルプ"に至ってはなんとも昨今のブルックリン勢を意識したようなオーガニック&サイケデリックな曲調でちょっとビックリした。もちろんそんな本作をポジティブに表現するのであれば「新境地を切り開いた作品」なのだけれど、それにしても彼らが持っていたあの抜群のフックセンスは一体どこに行ってしまったのやらと声を大にして言いたい。国内盤に収録されている今一つぱっとしない大量のボートラ/リミックス音源も、そんな本作の「彼ららしさゼロ感」を一層際立たせているのは言うまでもないだろう。

「デビュー作が大ヒットし、小金持ちになると、凡作を作ってしまう」といった定説は、去年ガールズがその新作で見事にぶっ壊してくれたわけだけど、本作はどうもそんな定説通りの凡作に仕上がっていて非常に残念。また、メンバー二人が骸骨姿になったそのアートワークも、もはや「私たちの才能は見事に枯れちゃいました、てへぺろ」といった自虐ネタに思えてきて仕方がない。ただ、最後に一つだけ断わりを入れておくと、私がここに長々と書き綴ったちょっぴりほろ苦いアルバム評は、言うまでもなく彼らのことを心の底から愛しているが故のもので、決して近頃話題になっているミュージックマガジンの松尾氏のそれとは違うということだけは理解してほしい。彼らの才能はまだ枯れていない。そう思いたい。ケイティ、ジュールス、次は頼みますよ。



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元Womenのメンバーを中心に結成された4人組=Viet Congのデビューアルバムは、ポップとアングラの絶妙なバランス感が病みつきになるインダストリアル・パンク作品!


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